一条工務店×パッシブ設計

2020年一条工務店と契約!一条工務店では弱いと言われているパッシブ設計を四苦八苦しながら実現するまでを記録していきます。

パッシブ設計(2) 庇(ひさし)の設計について

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こんにちは!

 

今回の記事では、私ことにゃじらが、一条工務店での家づくりにおいて考慮している「パッシブ設計」のうち、最も重要であると考えている庇(ひさし)について書いていきたいと思います。

 

実はこのブログ、庇設計の考え方を残しておきたくて作ったブログなんです。にゃじらは、庇はそれくらい大切なものだと思っています。

過去の記事でも書いたとおり、最近の住宅は庇が短め、もしくは全くない住宅が流行っていると思います。適切な庇を付ければ、雨を防ぐだけでなく、より低コストで快適な生活を送れると考えています。

にゃじらの考えたことにより、皆さんの家づくりがより良いものになればと考えます。是非最後まで読んで下さい!

 

今回の記事は以下のような構成です。(窓の時と同じですね)

今回も3Dマイホームデザイナー12(©メガソフト)を使い、日射制御のシミュレーションまで実施していますので、最後まで読んでみてください。

 

 

  

 

[注]

にゃじらの専門分野は建築関係でも、もちろんパッシブデザインでもありません。

素人が必至に勉強して、快適な家を実現するために検討した結果を記録するものであり、

専門の方からしたらとても幼稚な内容かもしれません。その点はご容赦願います。

 

(1) 庇の役割

みなさん、家づくりにおいて、庇をどこまで考えていますか?

にゃじらが周りの先輩方に聞いた限りでは、庇まで拘って設計した人はいませんでした。

庇は外観に大きな影響を与えるパーツでもあるため、見た目だけで選ぶ人が殆どではないかと思います。

まずこの項目では、庇の役割についてまとめていきたいと思います。

 

庇の役割ですが

・雨を防ぐ

・汚れを防ぐ

・日差しを防ぐ

があると考えています。

この3点について、詳しく説明したいと思います。

 

・雨を防ぐ

これは庇の目的の中で、みなさんすぐに思い浮かぶものだと思います。

庇が伸びていることにより、窓を開けても直接雨が当たらなくすることができます。

これによって、例えば洗濯物を干していて、急に雨が降ってきても汚れを抑えることができます。

 

え、サンルームがあるからいらない?室内干しだからいらない?乾燥器があるからいらない?

そうなんです。最近は外干し以外の選択肢も増えてきているため、庇がなくてもあまり困らないんです。なので、庇がないスタイリッシュな建物が流行っているんでしょうね。

 

 

・汚れを防ぐ

これは前項とも関連するのですが、庇により屋根から落ちた雨が壁に当たらない、または、地面に跳ねた雨が壁に当たらなくすることができます。

これによって、建物の壁面を汚れにくくすることができます。

 

え、防汚コートが壁面に塗布してあるからいらない?ハイドロテクトタイル(注 一条工務店光触媒機能付きタイル)があるからいらない?

こちらもそうなんです。近年の技術により、壁面は汚れにくくなってきています。

なので、やはりこの目的でも、庇がなくて困ることがないため、重要視されていないのではないかと思います。

 

 

・日差しを防ぐ

にゃじらはこの目的が一番重要だと考えています。

太陽からの日光を、直接室内に入れることなく、庇で防ぐことができます。

 

この言葉だけ聞くと

「日差しを防ぐなんて、カーテンやブラインドでもできるよね」

「夏はいいけど冬は寒いじゃん」

という意見があるのではないかと思います。

 

ですが、カーテンやブラインドでは、室内で日差しを防いでいるため、太陽による熱が室内に入ってきてしまっているのです!結果として夏は暑いことに・・・

(室外ブラインドを使えば良いのですが、アレは価格が高い上に耐久性が・・・)

 

また、適切な庇設計をすることで、

「夏は日差しが室内に入り込まないように防ぐ」

「冬は日差しが室内に入り込む」

ということが実現できます。

これにより、夏冬の光熱費を大幅に削減しながら、快適な生活を送ることができます!

 

それでは、どのような設計をすれば適切な庇を取り付けることができるのか、次の項目でまとめていきたいと思います。

 

 

(2) パッシブ設計で気を付けるべきポイント

前項で記載した通り、庇を適切に設計することで、

「夏は日差しが室内に入り込まないように防ぐ」

「冬は日差しが室内に入り込む」

を実現することができます。

この項目では、その考え方をまとめていきます。

 

・・・が、その前に、お伝えすることがあります。

庇を適切に設計することができるのは

「南窓」

だけなんです。

 

東窓や西窓については、朝夕の太陽が非常に低いため、庇では防ぐことができません。

「窓の設計」の項目でも書いた通り、東窓や西窓は少なく、そして、小さくしましょう!

どうしても大きい窓をつけたいときは、お高いですが外付けブラインドをお勧めします。

 

nyajirasu.hatenablog.com

  

また、北窓についてはそもそもあまり日差しが入りません。あまり気にする必要はありません。

 

それでは、庇の設計方法について説明していきたいと思います。

みなさん、太陽の南中角度は何度かご存じでしょうか。

勿論場所によって異なりますが、例えば東京では

 夏至:78.4度

 春分秋分:55度

 冬至:31.6度

になります。

 

従って、非常に簡単に纏めると、夏至の時に日差しが室内に入らず、冬至の特に日差しが必要に入るためには、

  31.6度~78.4度のいずれか以上の太陽角度となった際に、室内に日差しが入らないような庇

と設定すれば良いことになります。

 

それでは、何度以上の太陽角度の日差しまでが室内に入るかを計算していきたいと思います。

まず初めに、非常に簡単な家の断面図を示します。

 

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はい、画伯です。この絵は説明不要ですね。

この時、日差しの入り方は、以下の図の通りとなります。

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ここで記載した太陽光入射角を計算することができれば、何度以上の太陽角度の日差しまでが室内に入るかが分かります。

 

一条工務店での壁や天井、そして庇の長さは以下の図の通りです。

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これらの値を使用して、太陽光入射角を計算していきます。

ここから先は数学の世界です。

みなさん大嫌いなsin、cos、tanが出てきます。

細かい設定は置いておいて、計算式と計算結果は以下の図の通りでした。

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これらの計算結果から、太陽光入射角は65.2度となりました。

即ち、太陽光角度が65.2度以上の場合は、その日差しが室内に入らないことになります。

この計算結果によれば、夏至の日差しは防ぐことができ、冬至春分秋分の日差しは室内に入れることができます。

 

え?夏至でも朝や夕方は太陽角度が低いから室内に日差しが入ってしまうだろうって?

 

確かに角度だけを見ればその通りです。

しかし、特に夏場の太陽は日の出・日の入りの位置が北側に寄っています。

従って、そのような場合は、南窓から室内に日差しが入らないと考えます。

そこらへんの計算を上に示したような方法で実施すると、条件の度に計算し直す必要があるため、3Dマイホームデザイナーを使用したシミュレーションによりチェックしてみました。

シミュレーション内容及び結果について、次の項目に記載致します!

 

 

(3) 3Dマイホームデザイナー12を使ったシミュレーション

シミュレーションをするためには家を作る必要があります。

そこで、以下のような家を作ってみました。

 

[外観]

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[間取り]

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(画像上、上側が北方向です) 

 

一条工務店を代表する片流れ屋根!勾配は3.5寸

・13帖の広々LD。テレビボードは9尺の最大型!

・最大の魅力は南面の12尺パノラマウィンドウ!

 

ハイ、手抜きです。シミュレーションに間取りは関係ないので、この程度で許してください。

 

この建物に対し、以下のポイントにて太陽光が入るか否かをシミュレーションしていきます。

 

[日当たり確認ポイント]

(黄色の点です)

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[シミュレーション1 夏至]

まずは夏至のシミュレーションです。

日が上がってしばらく経った朝6時の状態です。

太陽光が北東側から射しており、南窓から日差しが入っていないことが分かります。

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そして夏至の昼12時。太陽は真南にいますが、太陽角度が高いため、その日差しは庇に遮られ、室内に入ることができません。

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更に時間が経過し、夏至の夕方18時。

ここまでくると太陽光は北西側から射しており、これまた日差しが室内に入っていないことが分かります。

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このシミュレーションの通り、夏場、特に夏至では日差しが全く室内に入っていないことが分かります。

これにより、室内の温度が太陽光によって上がることがなく、より弱い冷房で十分に室内を快適に保つことができることになります。

 

[シミュレーション2 冬至]

続いて冬至のシミュレーションです。

日が上がってしばらくした朝9時の状態です。

ここらへんの時間から、室内に日差しが入っていることが分かります。

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続いて冬至の昼12時。

太陽光角度が低いため、庇を抜けて太陽光が室内の奥深くまで入っていることが分かります。

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更に時間が経過し、冬至の15時。

この時間あたりまで、室内に太陽光が入り続けています。

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このシミュレーションの通り、冬場、特に冬至では、長い時間に渡り、室内の奥深くまで日差しがに入っていることが分かります。

これにより、室内の温度が太陽光により上がり、より弱い暖房で十分に室内を快適に保つことができることになります。

もしかしたら、昼間なんかは暖房が全く不要なリビングにすることができるかもしれませんね。

 

(4)まとめ

以上、庇の設計とシミュレーション結果について記載してみました。

この記事を簡単に纏めると以下の通りです。

 

・庇の最大の役割は日差しを防ぐこと。

・庇を適切に設計することで、夏場は日差しを防ぎ、冬場は日差しを室内に入れることができる。

・3Dマイホームデザイナーを使えばシミュレーションにより確認までできる。

 

数学が苦手な人には、特に(2)については理解しにくいかもしれません。

そんな時は、わたくしにゃじらまで(TwitterのDM等で)ご連絡ください。

自分の計算方法なので熟知しております。条件を教えて頂ければすぐに計算致します!

 

おそらくマイホームを建てる人の大半が、庇について気にしていないと思います。

何なら、外観上の問題から庇を取り付けない人も多いんじゃないかなと考えます。

でもちょっと待ってください!

その庇、ちゃんと設計すれば、もっと快適な家になるかもしれませんよ?

 

今度、庇を含めた日射制御のあれこれについてまとめてみたいと思います。